社員の考えに変化をもたらした、ある女性経営者の「問いかける」アプローチ

ある企業の女性経営者の話を聴くことができた。その方の父と兄が誰にも負けない技術力をもっているため、その技術力を身に付けたいと思って集まってきた人たちで成り立っていた組織だった。その世界では技術力を身に付ければ、最終的に自分で仕事を受注できるという夢を満たすことができる。そのため、どうにかして技術を盗みたいという職人集団が集まった企業だった。

そこでの決まりごととは

  • 仕事は一度しか教えない
  • 教えてもらっているときにはメモをとってはいけない
  • 技術力を身につけるためには、仕事が終わってから夜遅くまで練習しなければならない

などなど、現代ではありえないことが、当たり前の業界だったという。

その組織を引き継いだその方はその会社でパートさんとして事務仕事をしていたが、社長であるお兄さんが代表を辞めることを決意し、会社をたたむか自分が代表になるのかの決断を迫られて、まったく技術も持っていないし、経営にも携わっていなかったけど父と兄が作って大きくした会社をたたむのが惜しいという気持ちで代表に就任されたとのことだった。

父と兄は圧倒的な技術力があるため自分の考えが絶対だったが、女性でもあり技術力もないその方はどうしたかというと、幹部である男性ベテラン社員に対して、徹底的に問いかけたというのだ。

ジェンダーの考え方もあるだろうが、技術力が必要で圧倒的に男性社員が多い職場で女性としてできることは、問いかけて話を聴くしかない。「私は現場で使っている言葉すら分からないから教えて」と言い続けたそうだ。

そうこうするうちに、社員の多くが自分のことと会社のことを客観的にみることができず、どちらかというとマイナスの見方をする人が多かった。「私たちの製品は他と比較するとそうでもない」とか「私たちは地方の中小企業なので、この程度でしょう」というように自己肯定感が低い人が多かった。

妥協を許さない高度な専門技術と職人集団の気質こそ、会社の強みだと社長は理解していた。そこで、「社員であるあなたと、私たちの会社は素晴らしい」と言い続けたそうだ。そしてその後「どう思う?」と問い掛け続けることをあきらめなかった。

最初は問いかけても考え方が変わらない人が多かったが、それでも自分たちは素晴らしいと言い続けて、そして「どう思う?」と問い掛け続けた。社員から反対意見を言われても「そうなんだ」と受け止め続けた。

その結果徐々に社員の考え方が変わってきて、「そんなに社長が言うなら」と自分たちの製品に自信を持ち始めてくれるように、社員が変わっていってくれたそうだ。

今日伝えたかったこと

自分の思いを言葉にして伝えることは大事だが、それだけでは人は変わらない。だから、押し付けにならないように「あなたはどう思うか?」を問いかけ続け「そうなんだ」と話を聴き続けることで、人を変えられるかもしれない。

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