心理的安全

研修における心理的安全性の効果

若手の監督者向けの研修に心理的安全性を盛り込むと、どうなるのかを試してみた話です。

監督者研修ですから、テーマは受け持ち職場の監督指導や部下の指導・育成などがテーマの研修です。職場を受け持つ監督者は、Q(品質)・C(コスト)・D(納期)の3大責任は常に意識しなければならず、それ以外にもS(安全)・M(規律、意欲)など仕事と人を両にらみで対応しなければなりません。リーダーの一つの考え方であるPM理論でいうと、P(仕事の成果)のみを追求するとM(人間関係)がおろそかになり、ギスギスした職場になってしまう。しかしM(人間関係)だけを大切にすると、厳しいことを言えなくなりその結果としてP(仕事の成果)が上がらなくなると考えられています。なので、PもMも大事だということになります。

PM理論は日本の社会心理学者、三隅二不二(みすみ じゅうじ)が1966年に提唱した。PM理論とは、リーダーシップをP:Performance「目標達成能力」とM:Maintenance「集団維持能力」の2つの能力要素で構成されるとし、目標設定や計画立案、メンバーへの指示などにより目標を達成する能力(P)と、メンバー間の人間関係を良好に保ち、集団のまとまりを維持する能力(M)の2つの能力の大小によって、4つのリーダーシップタイプ(PM型、Pm型、pM型、pm型)を提示し、PとMが共に高い状態(PM型)のリーダーシップが望ましい、とした理論。

参照https://leadershipinsight.jp/explandict/pm%E7%90%86%E8%AB%96%E3%80%80pm-theory-of-leadership

そうはいっても監督者は人間なので、それぞれの特性があり、育ってきた環境の違いもあり、更にその人の置かれた状況もことなるのですから、一律でPもMも両方とも目指しなさい、というのも酷なことなのかもしれません。

さて、MIT(マサチューセッツ工科大学)のダニエル・キム教授の説による成功循環モデルをここで引用させてもらいますが、成功循環モデルとは、組織に成功をもたらす基本的な考え方です。組織の循環モデルには、グッドサイクルとバッドサイクルがあります。

バッドサイクルは、結果だけを求め、「結果の質」を向上させようとすることから始めます。しかし、なかなか成果が上がらず「結果の質」が低下すると、対立や押し付け、命令が横行するようになり、「関係の質」が低下します。ときには一時的に成果が上がるかもしれませんが、それはメンバーが追い詰められた状態で出した成果にすぎないので、持続せず、結局同じサイクルに入ってしまいます。

「関係の質」が悪化すると、メンバーは考えることをやめ、受け身になってしまい、仕事がつまらないと感じ、「思考の質」が低下します。受け身なので、当然自発的・積極的に行動しなくなり、「行動の質」が低下して成果が上がらなくなり、つまり「結果の質」がさらに低下するのです。

停滞していたり、なかなか成果の上がらない組織は、このようなバッドサイクルに陥っていることがよくあります。

一方で、グッドサイクルは、「関係の質」を高めるところから始めます。「関係の質」を高めるとは、相互理解を深め、お互いを尊重し、一緒に考えることであります。ここから始めると、メンバーは自分で気づき、面白いと感じるようになり、「思考の質」が向上することになります。面白いと感じるので、自分で考え、自発的に行動するようになり、「行動の質」が向上します。その結果として「結果の質」が向上し、成果が得られ、信頼関係が高まり、「関係の質」がさらに向上します。

「関係の質」の大切さを理解せずに、「結果の質」だけを求めていると、部下との信頼関係を築けず、どんなに努力しても組織として結果を出せないという状況になります。

遠回りをしていると感じるかもしれないが、何よりもまずメンバーとの人間関係の質を高めることが、成果を持続的に出していくための近道です。メンバーに対して「結果を出せ」と怒鳴り散らす前に、リーダーがやるべき大切な行動であります。

https://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1112/05/news007.htmlからの引用

さて、この考え方を研修に取り込んでみようと考え、関係の質の向上をするために、心理的安全性を研修の中で受講者の共通認識として理解してもらい、そして、自由な雰囲気を作りあげ、結果として研修の成果を上げることに取り組みました。

このように受講者に伝えました。

この研修では職場とは違って、自由に言っていい安全・安心な空間を保ちます。なので、私がこうしてくださいとお願いするとき以外は自由に思った通りに発言、行動していただいて構いません。本当に何を言っても構いません。

ここまで言うと受講者はきょとんとした顔になりました。理由を説明したほうが納得感があるので、次に理由を説明しました。

その理由は、そのほうがリラックスして、皆さんの呑み込みが早くなるからです。

皆さんは、忙しい職場を抜けて研修を受講して下さっています。現場では皆さんがいなくなることで、不安に思う人もいるでしょうし、ひょっとしたら皆さんをカバーしなければと考える人もいるでしょう。これだけ大勢の方が現場を不安定にして圧もあって来てもらったからには、この研修の時間を精一杯有効な時間として過ごしてほしいからです。

言われたから研修に来た、というような受け身の姿勢だったり、仕事のことが気になって研修に身が入らないといったことでは、時間を割いてもらった価値が半減してしまいます。よろしいでしょうか。

ここまで言って、なるほどと思う方は受講者の4分の1くらいです。ですがそのくらいの方が理解してもらえれば、人は人に影響されますから、組織を動かすには十分です。

効果はこのように現れました。

・グループワークでは、講師の指示を待たずにどんどん先に自分たちで進めていく

・講師の指示を飲み込むことができず、全体が一斉に動くときにバラバラになる

・グループワークが時間内に終わらない

・休憩時間が終わっても、ずっと雑談している

皆さんはどのように思いますか?

・統率が取れていない集団だと思いますか?

・自分で考えて動くことができる個人が集まった組織だと思いますか?

・人間関係は良さそうだけど、仕事には特に影響はなさそうだと思いますか?

私にも正直、このような環境で受講した研修を、皆さんが職場に帰ってどのように活かしてもらえるのかは分かりません。この後は、職場の上司や仲間がフォローしてくれることの影響が大きいですから。

ですが、いやいや受講させられていると思っている状況よりも、少しでも楽しんで受講したほうがその人の見になるのではないかと考えて、心理的安全性を研修に今後も取り入れていこうと考えています。

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