ホウレンソウをさせない企業文化

企業を訪問していると、「言い出せない勇気」に出会うことが多いです。

部下が上司に、若い人が年配の方に、男性上司が女性社員に、そして役員が社長に言い出せないなど、様々なケースで見受けられます。また個人だけでなく、下請け企業が元請け企業に…などの立場をわきまえて言い出さないことも、日常ではないでしょうか。

日本の文化としてある”察する”、”空気を読む”、”場を壊さない” など、敢えて公の場では発言しないことの大切さを否定するつもりはありませんが、このことがある一定のレベルを超えると、人間関係の破綻の第一歩となることがあり、更には事業の運営そのものにも影響が及ぼすことは良く知られています。

1986年1月28日のチャレンジャー号爆発事故により7名の乗務員が無くなった事故の原因に、NASAの組織文化があると結論づけられています。
度重なる打ち上げの延期の状況の中、自己の危険性を把握していた技術者が再度打ち上げの延期を”言い出す勇気”がなく、痛ましい事故災害を引き起こしてしまいました。

これほどの事故災害に至らないまでも、日常の業務において分かっていたのにホウレンソウを行わず、後々大きなクレームとなるケースは、私も何度も耳にしています。

上司や会社側は、なぜ分かった時点で言わなかったのだ、と担当者を問い詰めます。

私のところにも、「うちの会社はホウレンソウができていないから、ホウレンソウの研修をやってほしい」という依頼がありますが、ひょっとしてその原因は、ホウレンソウをさせない雰囲気、”言い出す勇気”を奪てしまっているのであれば、いくら研修をしても解決することではないですね。

このように、人が集まって出来た組織には時間の経過とともに文化が生まれ、その文化に逆らったことを一時の研修という刺激では、いかようにも変えることができないケースも多々あります。

このまま放置しておくと、報告するに及ばないと判断する内容が組織の中で増えてきて、迷ったときには言わないことが企業文化と根付いてしまうことになります

一度定着した文化は、後から入ってきた例えば新入社員は、違和感を覚えるかも知れませんが、そのうちそれを受け入れたほうが自分が楽なので、文化を取り入れるようになり、誰もおかしいとは思わなくなります。
ですので、気づいたときには時すでに遅し、なかなか後から変えることが出来ません。

そのためにも私たちは、じっくりと人材育成の担当者の方から話を伺って対応を考えるようにしています。

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