プレゼンが苦手な人でも聞いてもらうコツ
工場でのプレゼンテーション研修で受講者のプレゼンをきいているときに、ふと思ったことがありました。
「こんな一生懸命に話してもきいてくれないこともあるんだよなあ」
プレゼンテーションは聞き手がつくる、という言葉がありますが企業の中でそれを求めるのは無理というものですね。
その構造を簡単にあらわしてみます。
・伝える側はやってほしいことをお願いする
↓ ↑
・聞く側はやらされることを一方的に言われる
プレゼンテーションが行われる会議室の中にはすでにこの”場”が出来上がってしまっていますからね。
話しが上手な人は”場”を自分のものとすることができるので問題ないのですが、少し話しに自信のない方は”場”にのまれてしまい、言いたいことを言えずに与えられた時間を使いきれずに終了してしまうことでしょう。
両方とも“場”を受け入れている
私がさきほど使った、”場”を分かりやすく言い直してみると、
その場所にいる人たちが共有している暗黙の了解 と言えるでしょうか。
どのような暗黙の了解がなされているかというと
- ともかく、話しを最後まで聞く
- 話しを聞いている最中は、感情を顔にあらわさない
- 話しが終わっても、その場では態度をあらわさない
- 何かあったら、会議室を出てから直接本人にいう
などがあげられるでしょう。
まだまだ他にもあると思います。その企業により独自の文化がありますから。
暗黙の了解で成り立っている“場”
話しを聞いている側がどのような感情でいるのかが、プレゼンテーションをしている人からは分かりません。
でも、このような”場”ができあがっているので、「こういう”場”で問題ないよね、いつもこうだから」という暗黙の了解を、話す側、聞く側ともに受け入れているわけです。
どうしたらもっと聞き手を巻き込めるか
このことについて私もずいぶん考えました。20年前に会社員を退職して独立して仕事をするときに、真っ先についたのが大勢の人に伝える仕事でした。
学生の時には学級委員長をよくやっていた経験から、人前で話すことは絶対に嫌なわけではなかったのですが、そうはいっても自分より話しが上手な人たちに比べたら足元にも及ばないと思っていました。
しかし、自分の思いを大勢の人たちに伝えたい気持ちがあって独立したし、話しがうまくなりたかったので、プレゼンテーションがうまくなる研修を受講したこともあります。
その頃は、上手な人のように話ができるようになるためにはどうしたらいいのか、
心をこめて話すとはどういうことなのか、ということを必死に学んでいました。
一定の効果はありましたが、聞き手との距離を埋めることはできずに、一方的に話している感覚がありました。
そんなとき、別の視点から聞き手の感情を掴むことができる方法を知ることができました。
聞き手に働きかける
その方法とは、目には見えない相手に働きかけることで、相手がどのように感じているのかを知ることができるやり方です。
プレゼンテーションの話しから少し離れますが、複数人で話しをしていると、お互いにどう思っているのか分からないことがあります。
その場を共有するために他の人に働きかけることで、相手がどう思っていることを知ることができます。例えば
- この場の雰囲気ってどんなかなあ?
- この話題を話していても大丈夫?
などです。唐突にこんな投げかけをしたら、そこにいる人は驚いてしまうので、気心が知れている人同士であることが必要でしょう。
しかし、このやり方を使えば、そこにいる人が共有している”場”を少し動かすことができるかもしれません。
プレゼンをする“場”を、少し動かす方法
プレゼンテーションを行う会議室に、プレゼンテーションを行う人と、別の進行役が同席します。進行役の人が重要な役どころです。
会議室に参加者が入ってきて、いつもの暗黙の了解を心得て着席します。
進行役が集まってくれたお礼を言って、次に今日の進め方を説明します。
- プレゼンテーションの途中で進行役の私が、少し皆さんに働きかけをします
- よろしければ思ったことで結構ですからお答えください
- 私の働きかけは、今日の貴重なプレゼンテーションの時間を有効な時間にしたいから行います。
〇〇さんが聞いてなさそう(笑)、とかいうことを注意するためではありません。
と事前に断ってから、プレゼンテーションを始めます。
プレゼンテーションが始まってすぐに、進行役が働きかけします。
「今この場の雰囲気はいかがですか?」
恐らく参加者が驚いて働きかけについて、「えっ・・・別に・・・」となるでしょう。
それでもいいのです。働きかけているだけですから。
中断したプレゼンテーションがスタートします。
切りのいいところで、進行役がプレゼンテーションを中断して働きかけます。
「話したいことは話せていますか?」「聞きたいことは聞けていますか?」
今度は参加者が少し慣れてきましたから「大丈夫です」とか「聞いています」とか答えるでしょう。
進行役は、ここで少し渋い顔をしている人がいたら
「〇〇さん、何かここで分からないことがありますか?」と働きかけてみましょう。
もし、〇〇さんが「じゃあ、ちょっといいですか? さっきのことについて・・・」と疑問を話してくれたらしめたものです。
共有していた“場”が崩れたのです。それから、進行役の働きかけに素直に反応してくれる人は出てくるでしょう。
結果的にプレゼンテーションの時間が足りなくなっても、私は成功だと思います。
なぜなら後から何か言われるよりも、その場で皆がいるときに、それぞれが思っていることを参加者が言ってくれるわけですから。