ミラクスの組織開発支援

私が組織開発に関わる際に大事にしていることがあります。それは支援する相手方を尊重する、という姿勢を崩さないことです。

この考え方はエドガー・H・シャイン博士のプロセス・コンサルテーションをベースにしていますが、その方式に共感したのは、私は共感性が高く、HSP傾向にあるからです。自分の経験上、良いと思ったことを上手に相手に伝えるのが苦手な私は、支援側の思いをきちんと把握して寄り添うやり方が性に合っています。

相手任せで自分の意思が反映されていない、という考え方もあるでしょうけれど、私はこのやり方が長い目で見ると相手側のメリットとなると信じています。ですので、支援する期間は基本的に長期にわたります。もちろん、この私のスタンスにしびれを切らしたり、うまが合わなくて途中で取りやめとなった支援先もあります。今から考えると、別の方法を検討したり、スタート時の合意の取り方に問題があったのかも知れません。今はそれらの経験を基にスタートしています。

さて、エドガー・H・シャイン博士のプロセス・コンサルテーションを解説した書籍がいくつかありますが、他の記事でも書いてるように、私は長い書籍を読み通すことが苦手なので、今回も簡潔にエッセンスが読める本がないかなということで、下記書籍をご紹介します。

「シャイン博士が語る 組織開発と人的資源管理の進め方 プロセス・コンサルテーション技法の用い方」

この書籍で、自分でもパッと知りたいと思う事柄を3つ書き留めておきます。

(書籍の抜粋)

もくじ

1.プロセス・コンサルテーションの標準的な進め方

①.依頼先組織との初めての接触

②.率直な質問と傾聴

③.支援者と依頼先との人間関係の確立と心理的契約の明示

④.支援活動の環境と方法の選択

⑤.診断のための働きかけとデータ収集

⑥.対決的働きかけとデータ収集

⑦.関わる行動の縮小と終了

この進め方で私たちが重要だと思っているのが、①及び②です。

最初が肝心なのですが、最初に信頼関係を築くことができれば、その後がスムーズに流れます。シャイン博士は、⑤と⑥がプロセス・コンサルテーションのポイントだと述べています。コンサルテーションが傾聴で終わらないのは、この場面でいかにしっかりとこちらの考えを伝え、依頼先と対立、対決することを辞さない、と述べています。そのためにも、①、②で、しっかりと信頼関係の構築の重要性を訴えています。

2.中小企業におけるプロセス・コンサルテーション

企業がおかれる環境は、めまぐるしく変化しています。子供の時代の環境は、親の時代とは大きく異なっていくでしょう。

同じ事業を続けるとしても、その時代にあったやり方を、子供自身が新しく考えなければうまくはいかないのです。

親の影響下でお膳立てされた代替わりをしていては、そのような力は身に付かないでしょう。ですから、この場合、プロセス・コンサルテーションでは、息子/娘が自分自身で考えられるよう支援することがポイントになります。コンサルタントは現在の社長である父親と上手く対等な力関係を作り、それにより子供を自由にさせて、自立するようにもっていくことを目指します。

私たちが関与する企業は、製造業の中小企業が多いです。中小企業は、多くの割合で創業者から息子へ孫へと引き継がれていきます。その家の、その親族の関係を度外視して、企業のため、社員のため、と正論を振りかざしても私たちの支援を受け入れてもらえません。時には親の目線で、時には子供の目線で、組織を守ってきた方々を理解して、その調和を崩さないように支援していくことが、結局企業のためであり、ひいては働く人たちとその家族のためでもある、と考えています。

例えば、と書きたいところですが、1社1社独自の親族構成で形づくられていて、個人情報・企業情報に関わることになってしまいますので、ここは控えたいと思います。

3.企業文化とプロセス・コンサルテーション

コンサルタントというものは、どのような文化がなんであるかということを発見することはできても、その文化を変えることはできません。その理由の一つに、お互いがどのようにつきあっていくのかという内部的起源の基本的想定の影響があります。私が関与した企業では、コストがかかりすぎるというリスクを持つ文化に気づきながら、それを変えたがらなかったのです。コンサルタントは既存の文化に当てはまらないような新しいことを企業に導入しようとすべきではありません。それはたいていの場合うまくいきません。このプロセス・コンサルテーションという技法では、組織の中の人々と一緒に仕事をし、それにより組織文化に調和できるようになることを重視しています。

いろんな企業に関わらせてもらうと、その企業において文化として根付いていることに違和感を覚えることがあります。なんでこんなことをやっているだろうと。

例えば、

①毎月全員を食堂に集めて行っているが、社員の数が増えてきて満員状態に膨れ上がり、後ろの方の人は何を話しているのか聞こえていない全体朝礼

②労災事故を起こした部署が、その対応で忙しいからと出席しないけど、決まっているからと開催する安全会議

③他の建屋の倉庫に台車で製品を運ぶ際に、クリーンルームで着けているマスクをそのままつけて運ぶ

などです。昔からやっているからとか、決まっているからとか、何のために行っているのか分からずに継続しているし、その組織の人はほとんど全員従っていることや、新しく入ってきた人が違和感を感じても、しばらくしてそれになじんでしまうことなど、文化と言えるでしょう。

それらのことについて、私たちがその経緯や歴史を軽視して、ムダだからやめましょう、というのは組織文化を軽んじている人だ、と受け入れてもらえなくなり、こちらが支援したいと思っても、仮にその支援内容がどんなに素晴らしいものであっても、受け容れるのは組織文化になじんでいる人たちなので、文化に調和することが大事だと思っています。

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